
今回はスタートアップ初期の仲間集めがテーマです。しばらくは1人で駆け抜ける人もいますし、最初から複数人で起業する人もいるでしょう。事業が進捗するにつれて、仲間集めは事業の成功可否にとって非常に重要なテーマです。
組織づくりの一歩目となる仲間集め=採用ですが、ここで躓く例が非常に多いです。この初期での失敗からリカバリーしようとすることは、起業家であるあなたの精神的な肉体的な疲労が非常に大きく、場合によっては、資本政策と同じくらいに取り返しがつかない場合もあります。
そのため、私がこれまでの経験をもとに、初期のよくある失敗を得られた教訓をあらかじめ知っていただくことで、少しでも失敗の確率を下げられたらと思います。
最初の仲間は、あなたの考えるビジョンを信じ、時には共に方向性を変えていくメンバー

最初の仲間の重要性
起業したての頃や、最初の資金調達をする前に一緒に苦楽を共にしてくれる仲間は非常に重要です。事業を推進していく能力が高いことはもちろんのこと、あなたの考えるビジョンを信じ、時には共に方向性を変えていく議論もするメンバーです。少しでも能力または会社の方向性にコミットすることに不足がある場合には、そもそも事業が立ち上がらないですし、起動に乗り始めて新しい仲間がジョインしてきた際に、初期メンバーに対する信頼を獲得できず、一枚岩になれないということも起こります。さらに、初期に参画してもらったメンバーは高い報酬を渡すわけにもいかないため、株式やストックオプションなどを渡しているケースも多いです。これにより、もし袂を分かって軌道修正を図ろうとしてもなかなか簡単にはいかず、もめてしまい、最悪の場合訴訟にまで発展してしまうケースもあります。
このようなことは、冷静に考えれば想像できそうなことですが、なぜ失敗するケースが多いのでしょうか。私は以下の3点が理由だと考えます。
1.起業したばかりで不安であり、早く仲間が欲しい
起業初期は苦難の連続です。もしこれに一人で立ち向かっていると誰かに頼りたいと考えるのは当然です。とにかく側にいてくれる人が欲しくて、焦って採用してしまうケースがよく見られます。
2.他に取られてしまう前に取り込みたい
あなたと共に戦ってくれるメンバーは、あなたが感じるに優秀でしょうし、他からもオファーがあるでしょう。起業初期では、金銭的な報酬面では既存の企業に勝てないことも多いため、多額の株式やストックオプションを提示してでも他社に取られたくないという思いになってしまい、能力やビジョンに合うかということがおざなりになってしまいがちです。
3.強い会社に見せたい
あなたが取引先でも投資家でも、外部の人に会社を紹介する場合に、優秀に見えるメンバーが多数いるように見せたいという欲求も働きます。確かに、あなたひとりだけの実績をアピールするよりは、メンバーの実績も載せることで営業面でも補強になったり、カバー領域を広げたりする効果があるでしょう。そのため、誤解を恐れず言うと、「見栄えがいい」キャリアの人を経営メンバーとしてアピールしたく、採用を焦ることがあるように思います。
これらのことは、起業家として当然感じる不安から来るもので、それ自体は否定することではありません。むしろ、それを解決してくれるのが初期の仲間です。大事なことは、焦って採用を決めてしまうのではなく、重要なことをきちんと満たしているか、ちゃんと期待に応えてくれそうかを判断して、正式に迎え入れるべきだと思うのです。
自身の理念やビジョンに本心から共感・納得してくれる人か?

最初の仲間集めの注意点
では、どのようなことに注意して、初期のメンバーを採用すべきでしょうか。最も大事なのは、自身の理念やビジョンに本心から共感・納得してくれる人に入ってもらうべきと考えます。なぜならば、創業したばかりのビジネスというのは、仮説と検証の繰り返しであり、事業の運営の仕方の軌道修正を頻繁に行う必要があります。スキルを重視して仲間を集めた場合、その向かう先がそのスキルが向かないものであった場合、なかなか結果が出せないかもしれませんし、できないからその領域に行けないと言う判断をしてしまうかもしれません。スタートアップの本質としては、その決定理由はかなり不利な状況です。そのため、どのような方法を取ることになろうとも、共に同じ理念・ビジョンを共有し、力を尽くしてくれる仲間を優先するべきなのです。
さらにもう一つ挙げるとすれば、担当者レベルの採用よりもマネジメントレベルの採用を優先するべきです。担当者レベルのメンバーは比較的採用が容易であることから、優先してしまいがちです。しかしながら、先に担当者レベルの人が入った場合、その人たちをマネジメントする必要に気づき、結局はマネジメントレベルを採用することになります。上司が後から入ってくると、初期のメンバーはやる気を失ってしまうことが多く、辞めてしまい、結局はまた組織を一から構築しなくてはならなくなります。こういった二度手間は事業の進捗スピードを落としてしまいます。
仲間集めで優先すべきは、経営メンバーであり、あなたの理念、ビジョンに心から共感してくれる人ということになります。
もちろん、あなたの置かれている状況や業界によって正解は異なります。
Let’sスタートアップ第5回でも述べましたが、このような観点で仲間を採用をする場合、当然ながら理念やビジョンが言語化されている必要があります。初期の仲間の共通言語となるように、理念を明確にしておき、それに本心から共感してもらえる人を採用すべきです。
次回は社外での仲間として、専門家との付き合い方を書きたいと思います。
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