自ら思い立って始めたビジネス。事業を拡大させるために一人でやれることには限界があります。そんな時に力になってくれるかもしれないアクセラレーター。今回は、事業拡大の強い味方・アクセラレーターの利用について紹介します。
アクセラレーターとは?
アクセラレーターとは、シード期のスタートアップ企業の成長を支援するためにノウハウや資金を提供してくれる組織です。アクセラレーターが短期集中で必要な支援を行う”アクセラレーター・プログラム”を公開しており、それに起業家は応募・申し込みを行います。通常は審査があり、通過すればその必要な支援を受けられる仕組みです。個別の会社名は本コラムでは避けますが、インターネットで今募集中のアクセラレータープログラムを検索すると相当数のプログラムが出てきます。
アメリカで代表的なアクセラレーターとしてY Combinatorというものがあります。世界最大規模のアクセラレーターで、毎回100チームほどが参加するイベントプログラムを年に2回開催しています。日本では鉄道、金融、メーカー、不動産デベロッパー、地方自治体など多岐にわたる業種で実施されており、数十種類は出てくるほどです。名だたる大企業がそれぞれプログラムを提供していますので、自分の業界に関わるアクセラレーターを検索してみてください。
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アクセラレーターの狙い
アクセラレーター・プログラムを提供している組織というのは、いわゆる大企業や地方自治体が担っています。アクセラレーターはベンチャーキャピタルなどと違い、投資をメインにすることはあまりなく、文字どおりスタートアップ企業の成長をaccelerate(加速する)ことを目的としています。彼らの真の目的とは、スタートアップなどが行っている新興事業に関わることにより、彼らだけでは達成できない共創や協働を生み出す実証実験を行うことです。つまり彼らはあなた方のアイデアや行動力を借りて、イノベーションを生み出したいのです。一般的には、その業界を根底から破壊するようなイノベーションは、スタートアップ企業から生まれます。その業界で一定のポジションを築いた企業からは、自らを否定するような仕組みや新規ビジネスは出てきにくいためです。例えば鉄道会社がそもそも電車に乗らない将来を見据えたビジネスを発想することは難しいですよね。ただし本当にそんな将来が現実的になってきた場合に、指をくわえて見ているわけにはいかないので、起業家と一緒に新しいビジネス・市場に張っておくためにアクセラレーターとなり、先行投資しておくのです。
最近は地方自治体がプログラムを企画していることも多くなってきました。雇用を生み出し、地域活性化を直接的・間接的に推進してくれるスタートアップ企業を誘致したい思惑があります。さらにはもっと踏み込んで、スタートアップ企業にかかる税金を減免し、積極的にスタートアップ企業を集積させようとする福岡市なども現れはじめており、戦略特区などの枠組みを使い、全国に拡大していく傾向になるでしょう。ビジネスを始める場所が限定されないのであれば検討してみる価値はありそうです。
彼らは彼らの持つヒト・モノ・カネなどのリソースとノウハウを惜しみなく出してくれます。多くは創業初期の起業家にとって最も必要としていてありがたいものです。また、大企業の名前を冠したプログラムに採択されていることは、まだ知名度のないスタートアップ企業にとっても対外的な信用を高めることにつながります。アクセラレーター・プログラムは起業家とアクセラレーター双方にメリットがありますね。
アクセラレーターの真の目的とは、あなた方のアイデアや行動力を借りて、イノベーションを生み出すこと
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具体的なプロセス
アクセラレーター・プログラムは期間は数週間から1年ほどまでと特色がありますが、一般的には下記のプロセスになります。
ビジネスプランの募集:
プログラムによって募集している内容が異なります。○○市場で活動するもの、△△の技術領域に関わるもの、など限定している場合が多いです。人気のプログラムになると何百倍という倍率になる場合もあります。
書類選考:
定められた締め切りまでに、上記のビジネスプランを決められた方法で提出し、書類選考が行われます。通常、1-2週間ほどで通過・非通過の連絡がきます。
面接:
2-3回の面接が行われることが多いです。プレゼンテーションを行い、質問に答える型式が多いでしょうか。多くの場合、それぞれの回でフィードバックがもらえます。次回のステップがある場合は、良い意見はしっかりとフィードバックの内容を取り入れましょう。スタートアップ企業は成長のスピードが命。短期間であっても改善・修正するスピード感も見られています。
決定:
無事採択となった場合はその通知とともに、ネクストステップの説明が行われます。対外的に宣伝を行いながら実施しているプログラムなどでは結果発表をパーティ形式にして壇上で発表するなどすることもあります。
支援:
プログラムの特色によって通常数週間、長いものでは1年間というものもあります。募集時の要項にあったとおりの支援が受けられます。出資、人員の派遣、場所の提供、サンプルの提供、プロモーション支援など大企業のリソースを積極的に活用しましょう。
成果発表:
通常のアクセラレーター・プログラムは大企業や自治体主導で行われているため、成果報告は大抵の場合必要となります。特に自治体主導の場合には、報告会などの形式で発表が求められるかもしれませんね。
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何に応募するか、得られるメリットを考える
このように非常に意義のあるアクセラレーターですが、得たいメリットを正確に見極め、それがちゃんと得られそうかを判断する必要があります。特に注意したいことは、アクセラレーターは資金調達または投資を呼び込む手段として(もちろんその効果もありますが)のみ考えないようにすべきです。せっかく大企業や自治体の協力を得られるのですから、資金以外のメリットが得られるかを期待しましょう。
得られるメリットを見極め、打席に多く立つ
まず期待できるポイントとしては、販路の拡大が考えられます。その大企業が持っている顧客リストが大きい場合や、その大企業だけでも相当の売り上げになる場合、さらには大企業の営業リソースを利用できる場合など、営業において大きな戦力になるかを考えてみましょう。資金の出し手にはないメリットといえるのではないでしょうか。また、人材を利用できることも大きなポイントです。どうしてもスタートアップは人手が足りませんし、採用にも多額の費用がかかります。アクセラレーターと協業したり、必要な機能を委託できたりしないか検討した方が良いでしょう。最後に、試作品製作やサービスの実証実験を行うことができる点です。スタートアップではすぐに売り上げにつながらないようなR&Dに投資することが難しいです。大企業が持つ技術やノウハウを組み合わせて試作品を作ったり、サービスのパイロットテストを行わせてもらったりということはアクセラレーターならではのメリットと言えます。大企業ですと一定規模のR&Dは行っているでしょうし、その成果がアクセラレーター側にも得られるので、協業しているスタートアップ相手には予算が出しやすい支出になります。このように、資金提供者である投資家や金融機関からは得られにくいメリットを意識して考えてみてください。得られそうだと分かれば、どんどん応募をしてみましょう。スタートアップにおいては打席に多く立つことが重要です。アクセラレーターの応募には、費用がかかることはほとんどありません。積極的にチャンスを掴みましょう。
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次回は、スタートアップ企業でもできる、社外向けPRに目を向けたいと思います。
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