
ビジネスを始めようと思い立った時、きっとあなたの頭はアイデアに溢れ、好奇心からくるワクワクと成功への自信から、気持ちも満ちていることでしょう。
そんな中で起業家が最初に乗り越えなければならない壁として、「 市場選択をどうするべきか 」は非常に重要な要素です。初回はこちらの考え方についてまとめてみたいと思います。
市場選択の重要性
読んで字のごとくどの市場で勝負するか、ということです。市場を定義することは、ビジネスパーソンにとって非常に重要であることは言うまでもありません。起業家にとっては、特に重要な要素です。単純に1兆円の市場と100億円の市場でしたら、同じ利益を出していくために、シェアをどれだけ取らなくてはならないかが明白ですね。どのような会社を目指すかによっても変わりますが、市場が大きければ大きいほど(大きくなることが見込まれるほど)、創業初期の難易度は易しくなると思います。
市場の定義の仕方を、今注目を集めている領域に変えてみせることで、驚くほど関心が変わってくる

「”風が吹いている”市場でしか勝負しない」
これはとある東証1部上場企業のCEOの話です。その会社が新規事業をやったり、スタートアップ企業に投資したりする際には、風が吹いている(=追い風になっている)領域だけに集中すると明言するほど。その代わり、その市場に参加しているプレイヤーには複数社に投資すると言っています。普通は、複数に投資すると将来それぞれが競合になってしまうため、市場ごとに1社にだけ投資というスタンスの投資家が多いのです。それでも複数社に投資する理由は、①風が吹いている市場では、プレイヤーが協同して市場を大きくする行動をするため、競合しないということ。②さらにそのプレイヤーのうち、どこかがうまいやり方を見つけたらそれを共有してさらに市場拡大のペースを上げられること、の2点があるようです。
これほど市場自体がどれほど拡大するか、ということが重要なポイントとなります。
風が吹いている市場に参加しているプレイヤーには複数社に投資する。その方が市場拡大のペースを上げられるる

何をdisruptするのか
市場が拡大するということはどのようなことでしょうか。これまでの顧客のペイン(不便や不利益)をdisrupt(崩壊)する必要があります。市場の中で、上手なやり方が発見され、そのやり方がこれまでのやり方をdisruptするパターン、もしくは市場自体が既存の市場をdisruptするパターンの2つが考えられます。前者の例では、Netflixやhuruなどの動画配信サービスにより、リアルでDVDレンタルするビジネスがそもそもいらなくなっていくということが当てはまり、後者の例では、QR決済やSNSでの送金技術が主流になってくるなどで、送金機能としての銀行の役割はなくなってくるということが当てはまります。本当にそのような未来になるかはわかりませんが。
あなたが始めようとしているビジネスが、何をdisruptすることで顧客に価値を提供できるのか。明確になっていれば市場が拡大する可能性は大いにあるかもしれません。
あなたが始めようとしているビジネスが、何をdisruptすることで顧客に価値を提供できるのか

FMFの考え方
これまでの市場選択の考え方に加えて、FMF(Founder Market Fit)があるかを考えてみてください。FMFという言葉はあまり馴染みがなく、PMF(Product Market Fit)なら聞いたことがあるかもしれません。PMFはその会社の製品やサービスが、仮説通り市場に受け入れられるかという観点です。プロダクトやサービスすらまだ無い、ゼロからイチのフェーズでは、PMFよりもFMFーつまり”起業家である「あなた」がこの市場を選んだのはなぜ?”という問いです。
起業家である「あなた」がこの市場を選んだのはなぜ?
これまでのあなたのキャリアや置かれた環境、想いなど、あなたがその市場でビジネスをやる理由というものが必要です。例えば私の知り合いに、とある犬種が大好きで多頭飼いしているのですが、何か困った時にインターネットで調べようと思っても、犬全体の情報は出てくるのだけど、その犬種には当てはまらないことが多くて悩んでいるという人がいました。その人は、その犬種だけの情報を集めたwebサイトがあれば、その犬種オーナーさんが助かるのではないかという思いからメディアを立ち上げました。結果、その犬種のオーナーさんに評判が伝わり、ユーザー数も増え、別の犬種の情報メディアを複数立ち上げて運営されています。
このように、あなたのこれまでの経験から顧客のペインがよくわかる領域であれば、あなたがこのビジネスをやる理由になり得ます。FMFがなくてもいいなら、誰がやっても、大企業の一部門がやっても上手くいくはずで、そうならないのは、あなただから成功させられるFMFがあるからに他なりません。あなたが思いついたアイデアをFMFの観点で見つめてみましょう。
今回は、市場選択×FMFをテーマにお話ししました。次回はスタートアップに欠かせない資金調達について、より実務的に役立つ情報をお届けします。
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