欧州と東京を往復。音楽制作プロダクションを経営する渋谷さん
2011年に設立した株式会社ノモスの代表取締役として、音楽プロデューサーとして、活躍する渋谷ゆう子さん。音楽家のマネジメントやプロモーション、音源制作やコンサート企画運営、音響機器メーカーの新製品開発のアドバイスなどを主な仕事としています。
クラシック音楽を中心とした業務が多いため、必然的にドイツ、オーストリア、イギリスなど海外で仕事する機会が多く、これまでの出張回数も数え切れないほど。音楽プロデューサーとしてだけではなく、現地の音楽業界最前線の様子を取材し、コラムを執筆するなど幅広く活躍中ですが、プライベートでは二男一女を育てるシングルマザーでもあります。多忙を極める渋谷さんの時間マネジメント術、仕事、社交、トラベルにおけるそのスタイルとは?
1席100万円のウィーンフィル「ニューイヤーコンサート」の裏方に潜入!
2020年を迎える年末年始、渋谷さんはウィーンにいました。チケット料金は1席100万円を超えるものもあり、世界中で5,000万人が視聴するといわれるウィーンフィルハーモニーのプレミアコンサート。その「ニューイヤーコンサート」のリハーサルから本番までの取材のために訪れていたのです。
異業種から参入した渋谷さんが大事にすることとは?
渋谷さんの仕事の流儀は、「縁(えん)を大切にする」ということ。
もちろんどの業界でも同様ですが、特に音楽業界は、人との縁が重要視されます。人からの評価によって良くも悪くも仕事が左右される傾向が色濃い業界でもあります。
もともと予備校や人材派遣会社で営業や企画広報に携わっていたという渋谷さん。全く異なる異業種から人脈がものを言う業界に参入し、プレミアコンサートのリハーサルと収録チームに参加して裏舞台に潜入し、取材ができたのはなぜなのでしょう。
TIPS1)案件を獲得する際『一番トップの人』に話を通しに行く
交渉するべきキーマンが誰なのかを見極め、キーマン本人と交渉しOKをもらうことで、トップ以下の誰もNOと言えない状況を作ると言います。
そして……
TIPS2)一度仕事の依頼を請けたら、10倍の「付加価値」を付けて返す
この点も渋谷さんならでは。
「案件を依頼したいとき、必ずしも予算が潤沢にあるわけではありません。無理を言わざるを得ないときもあります。低予算の中でお願いする代わりに、受けてくれた人には、その人の仕事に大きなメリットになるような付加価値を付けるようにしています。逆に低予算で依頼を受けたとしても、『いただく金額それなり』の仕事をするのではなく、それもまた10倍にして返すようにしています。」
「そうすることで、なにかが起こったとき『渋谷さんに恩返ししよう』、『渋谷さんにまた依頼しよう』と過去に行った仕事以上のチャンスがやってきます。」
実は、今回もこんなエピソードが。このウィーンフィルハーモニーのニューイヤーコンサートのチケットは、1枚100万円とも言われる高額なもので、入手するのが世界一困難なプラチナチケット。そのチケットが2枚も音楽関係者を通じて手元に巡ってきたのだそう。
「以前から『ニューイヤーに行きたい』と人に会うたびに言っていました。そのことを覚えていてくれた音楽関係者がいたんです。他にも行きたい人は世界中にたくさんいます。2枚合わせて高額で売ることもできたはず。それをせずに私に譲ってくれた。きっと私をよく知る彼は、私に譲ったら、『きっと未来につながる面白い使い方をしてくれるはず』と考えたのだと思います。」
TIPS3)1粒のチャンスを絶対2粒以上の意味にふくらます
また渋谷さんの基本的な仕事術は「1つの依頼に2つ以上の意味を持たせる」ということ。同じ時間を使うにしても、2倍以上の価値を生み出すにはどうしたらいいかを常に考えるそう。
今回のウィーンフィルの件もそうでした。
チケットを譲り受けたのは考えられないほどのラッキー。でもコンサートの本番だけ観客として参加するのではもったいない。音楽雑誌の出版社などの関係者に「コンサートに行くので、ついでに取材してきますよ」と直談判し、テレビ収録をおこなっているオーストリア放送協会(ORF)に許可を得て、コンサートの裏方として潜入取材をし、記事を書くという仕事にまでつなげた渋谷さん。
自分の手に落ちてきた類まれなる幸運をそれだけに留まらせず、さらに生かすべく音楽メディアに売り込み、取材案件(しかも複数!)を獲得したわけで、まさに機会を最大限に生かしたのです。さらにはこの取材内容が認められて、ソニーミュージックから発売される公式Blu-rayにも解説文章が掲載されることに。自ら獲得した仕事だけでなく、その結果もっと大きな成果につなげることになりました。
後編では、渋谷ゆう子さんが、kay meを愛用する理由をうかがっています。
<後編>を読む
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