「東京を生きる4女子物語」 kay me が贈る小説タイプの連載
東京に生きる4人の女性…4人の関係性を詳しく見る
久しぶりにメイと話す。
「久しぶりですね、アンナさん、元気でした?」
明るい声を聞いて、嬉しくなったけど、ヒロシのことを切り出そうにも、どう切り出そうか。
「電話かけてくるぐらいだから、なんかあった?」
メイの先回りした質問が話し出すきっかけをくれた。こういうときのメイの主婦の勘はさすがだ。
「そう、当たり。実はね…」
メイに色々話したら、少し心が軽くなった。
「ヒロシなんだけど、気になる女の人がいるみたい」
「え、浮気?付き合ってる相手はダレ?」
先走った質問に逆に戸惑う。
「食事とかに一緒に行ってたみたい」
「食事?食事だけ?」
「うん、そう」
「食事だけで済むわけないわよ、付き合っている証拠は?」
興奮気味のメイを落ち着かせるように、私はポツリポツリと話す。
「何回か食事に行ったけど惹かれていた、って言われたの…」
「そんなの、浮気でもなんでもないわよ。友だちでしょ」
鏡に映る自分を見ながら、メイの言葉を思い出していた。
「いちいちそれくらいのことで騒いだらダメ、アンナさんが嫉妬したなら、それぐらいまだヒロシさんを好きってことでしょうけど(笑)」
今日のラベンダーとネイビーのバイカラーの切り替えシェルワンピースは、美しいシェル(貝)のような胸元、エレガントな配色で私の気持ちを落ち着かせてくれた。
今日は、勝ち取ったビッグプロジェクトに新しいメンバーを向かい入れて、キックオフだ。長いミーティングになるだろうから、ストレッチの効いた着心地の良いワンピース が私の味方。
ロングパールネックレスは、軽量で長さがあるから、1重でも2重でも楽しめるもの。
そうだ、これは4年前にヒロシに誕生日に買ってもらったものだったな。
何気なく付けてきたパールネックレスが、当時のヒロシのことを思い出させた。そう、しっかりしているように見えて抜けている、子どもみたいな人。メイの大したことない、っていう一言に気持ちが晴れた。ヒロシのことは好きだ。別れる気もない。今回のことはもう許そう。
ヒロシが他の人に目を向けたことにショックを受けた。女として自信を失いそうだった、それが本音かもしれない。でも、私は私らしくいこう!メソメソしたりグジグジするのは「らしく」ない。ふと、ミーティング前に入った銀座のケイミ―で、ジュエリーが目に留まる。
「これ、素敵」こんなときでも、綺麗なものに惹かれるって女心を忘れていない証拠。キラキラ光るプラチナとダイヤのリングに目がいった。
「こちらは着物の『帯留め』からインスパイアされたデザインで、未来の縁を結ぶという意味を込めましたものです」優しい笑顔で店員さんが指輪をケースから出してくれた。
「Musubi F Platinum」
ふとこれをヒロシに買ってもらおう、それで今回のことはなかったことにしよ♪そんな考えが頭をよぎった。
今夜は、ヒロシを呼びつけて、ご飯をご馳走させて、このリングを買ってもらう。お、PCも入るこの軽量な仕事バッグもいい。ずっときになっていたけれど、これもねだってやろう!そして、むしゃくしゃした気持ちを、それで終わりにする。
ダンナの浮気(ま、浮気一歩手前の告白だったけど)で車を買ってもらったテレビタレントの話を聞いたことがあったけど、いままさにそんな気分。
誕生日、結婚記念日、色々記念日はあるけれど、今回は何記念日になるかしら。でも、それも夫婦としての長い道のりの1ページに過ぎないのかもしれない。
仕事は完璧主義で努力してここまできたけど、夫婦関係の努力の仕方はもっとむずかしい。でもどんなときも、自分の気持ちに正直に、前向きに進んでいこう!
週末はこの「結び」リングをつけてまた、ヒロシとマルシェに行こう(おわり)
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