「東京を生きる4女子物語」 kay me が贈る小説タイプの連載
東京に生きる4人の女性…4人の関係性を詳しく見る
ヒロシと話し合った後、家を出てひとり行く当てもなかった。入ったこともないバーで時間を潰したけれど、答えが見つからないまま朝方家に帰った。朝、起きると、メイクも落とさずリビングのソファで寝てしまったらしい。ヒロシはもう会社に行ったようだった。
キッチンにいくと、サラダが作ってあった。ヒロシが私のために作ったんだ・・・雑に盛り付けてある様子だけれど、頑張って作ったのがわかる。
サラダを一口食べて、会社に向かう。今日はいつもよりヴィトンの香水をきつめにつけた。そして、「ここぞ!」というときに着る華やかなワンピースをチョイスした。まとう色で気分を上げる。仕事では絶対暗い顔を見せない。これらは私のポリシー。ビッグディールだった商談がまとまった。後輩女子ケイのサポートのおかげだ。こういうときいつもなら真っ先にヒロシにメッセージを入れるのに…伝えたい人に伝えられない。
緊張が解けて美しいブルーからグリーンに移り変わるグラデーションを見てると癒される。ジャージー素材で伸縮性があるのも、立体的なバストラインで女っぷりを上げてくれるのも、今の私には「癒し」だ。
新しいプロジェクトのチームを結成してキックオフ。ケイをサブリーダーにつけて、私を中心にスタートさせることにした。大事なブレストにそれぞれの意見が飛び出して熱が入る。約2時間、ブレストは面白い内容がポンポン出て、スタッフとのコミュニケーションはかなりいい感じに取れた気がする。
ひとり、頭を整理させようとコーヒーを飲んでいるとケイがやってきた。「なにか、ありました?」鋭い…少し心配しているようだった。「ちょっとね…」仕事に手を抜かないのが主義だ。だから、プライベートを仕事に持ち込んだことは一度もない。
「これから、NYからのお客様をアテンドなの。観劇にお連れして、食事会・・・楽しんでもらえるといいけど」あえて、いつもと変わらない調子で返す。
ふとヒロシと自分の将来のことを考えると落ち着かなかった。子供もいないし、お互い外で思いっきり仕事に打ち込めるのは理解しあっているからこそだと思ってた。でも、もしかしたら、そういうところが少しづつヒロシに寂しい思いをさせていたのかもしれない…そんなふうにも思えたけれどヒロシと今まで通り、はい、仲直り!という気持ちにはなれない。なんせ、気持ちがあるって聞いちゃったから。
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