「東京を生きる4女子物語」 kay me が贈る小説タイプの連載
東京に生きる4人の女性…4人の関係性を詳しく見る
マルシェから無言で帰ってきた。おしゃべりなヒロシが口を開かないのが怖い。夕方から知り合いのレストランのオープニングパーティに参加する予定だったから、ワンピースに着替えて「帰ったら話をしよう」とだけ言って家を出た。とにかく一緒にいる空気が重くて外に出たかった。
ヒロシに褒めてもらいたくて買ったワンピース。スッキリ見える深めVネックとバストのタックが女性らしさを演出してくれる。目を引く色とサークル柄が素敵でパーティ映えする1枚。
パーティの間も、ヒロシのことが頭から離れなかった。怪しいだけで浮気じゃないかもしれない。なのに疑うことで二人の関係がおかしくなったらどうしよう…適当に周りに挨拶をして、途中で抜け出た。
パーティは上の空だった。とにかく帰って話をしよう。「今から帰るね」と、 ヒロシにラインを入れる。既読になったけれど返事はなかった。自信をなくかけたときお気に入りのワンピースとパールのネックレスとウォレットバッグ…ウインドーに映る私はいつもよりキレイな気がした。
名刺交換が多いパーティでは、このウォレットバッグひとつあれば名刺入れを別に持たなくても大丈夫。
軽量タイプのパールネックレスは、バルサ材という軽い木材を削って作られたもの。マグネット式の留め具でネイルも気にせず使える。
パーティ会場だった銀座から家まで、長い道のりに感じた。
「ただいま」
家に入るとヒロシがリビングに座って私を待っていた。
「おかえり…」
少し元気のない様子のヒロシは、わたしにコーヒーを入れようとして立ち上がった。
「ヒロシ、コーヒーはいいわ」
立ち上がったヒロシをそのままソファに座らせて、着替えもせずに本題に入った。
「ヒロシ、もう一度聞くけど、こないだ一緒にいた人はダレ?」
ヒロシはちょっと一呼吸おいて静かに話し出した
「あれは、本当に会社の人なんだ。アンナが思っているような関係じゃない。でも何回か食事に行った」
「トモダチ?」
女の勘でそうじゃないことは察した
「そう、トモダチ・・・」ヒロシの声がどんどん小さくなっていく。
私の顔が泣きそうになるのを見て、
「ごめん、アンナ、ウソは見抜かれるね、惹かれていたのは事実」
と、ついに本音を口にした。「ただ、食事だけの関係」
ポツリポツリと話すヒロシの言葉をかき消すように
「信じられるわけないじゃない」
と言い残して家を出してしまった。
ヒロシはあの女の人に惹かれたと言った。多分、あの女の人とはよく会っていたに違いない。同じレストランに連れていく抜けたところもヒロシらしい。
どこまでなら許せるとか、そういう問題じゃない。こういう場合、どうしたらいいんだろう…予感はしていたものの、気持ちの整理がつかず、あてもなく街を歩いた。
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