「東京を生きる4女子物語」 kay me が贈る小説タイプの連載
東京に生きる4人の女性…4人の関係性を詳しく見る

19:30慌ててヒロシがやって来た。「ごめん、遅くなって」 …店に入ってくる感じも、迷わず私のいるところに駆け寄る感じも違和感がなかった。そう、ヒロシは「誰か」と確かにこのおしゃれな店に「よく」来ている。
「30分遅刻!もうワイン飲んでるよ」
「ごめん、ごめん!」
確信に迫りたかったけど、ヒロシの笑顔がそれをさせなかった。
(少し、飲んでから聞いてみよう)胸がざわつく…。

お互い何杯か飲んだ頃、酔いに任せて聞いてみた。
「ねえ、あのさーヒロシ。こないだ、女の人といるの見かけたんだけど・・・あれダレ?」
「え?いつ?」
いつも焦ったりしないヒロシがちょっと動揺して見えた。
「会社の飲み会があるって言ってた日」
「あ、あぁ、会社の後輩かな」
ちょっと沈黙のあと・・・
「そうなんだ、この店よく来るの?」
質問を変えると今度はちょっと驚いたような顔をして「あ、うん、会社の人間とね」
ワイングラスを慌てて飲み干しているように見えた。

土曜日、いつもと同じ週末がやってきた。違うとしたら、昨日のモヤモヤを引きづったままというところ。結局、真相を究明できず変にお酒が進んで酔ってしまった。(いつも肝心なことが聞けない)
今日はヒロシと早朝マルシェに行く約束をしていた。前々から私が行きたいとせがんだ約束だったから、ヒロシもそのつもりで早起きして準備してくれた。

今日のマルシェは歩きやすいスニーカースタイルにしたかったから、ロングスカートで。程よいボリュームのフレアラインが女性らしいシルエットで好き。

フラワーブーケの柄も気分が上がるし、ジャージー素材で動きやすいのも着心地良くて週末にはいい。

羽織ってきたデニムライダースジャケットはコンパクトなシルエットなのにストレッチが効いていて、ロングスカートとも相性がいいの。
デニムは好きだけど最近あの重さや固さにどうも敬遠しがち。でもこのデニムライダースはストレッチするし、軽いすぐれもの!インディゴブルーなら、大人っぽく着こなせる。

裏地もピンクで可愛い。ストレッチで肩も凝らない着心地

前のジッパーを開けてラフに着るのも雰囲気が変わって、インナーでイメチェンできるから着回し力も抜群

それから、手ぶらで歩けるようにウォレットバッグを斜め掛け。マルシェは小銭のやりとりがあるから、すごく便利。

青山のマルシェは人でごった返していた。マルシェの目玉は、なかなかお目にかかれない新鮮な野菜やジャム、コーヒーなんかも揃う。 コーヒー好きのヒロシを誘ったのは、喜ぶ顏が見たかったから …。

ヒロシが生産者の人と楽しそうにやり取りしている姿を見て、「あれは、浮気じゃないよ、気のせいだよ」ってブツブツ自分に言い聞かせる。「ね、ちょっと休もう」少し歩き疲れた。 「OK、オレ、あっちのコーヒー豆屋を見てくるから休んでて!」そう言ってひとりで歩いて行ってしまった。
ほんと、子供みたいなところがある。実は週明けに、例の苦戦していたビッグビジネスの企画が通りそうだと 連絡があった。ヒロシには誰より先に報告したかったけど、月曜日はっきりしてからにしよう。

ボンヤリ仕事のことを考えていたら、ヒロシを見失う。でも、あのコーヒー豆屋だな…きっとお気に入りのお店だから店主と話し込んでいるんだろうと思って、少ししてからヒロシの後を追うと遠くに携帯に夢中になっているヒロシを見つける。

「ね、コーヒー豆買った?」まったく気が付く様子がない。
「ね、ヒロシってば」近づくと私の声にびっくりして携帯を隠すような素振りをした。え…なに。
「ね、ラインしてたの?ダレと?」「え、会社の人、仕事、仕事、なんでもないよ」
おかしい、そんな言い訳じみた事言わない人だ 。
「うそ」
もう、追及の手は止められない。
「ね、ちゃんと話しようっか」
今夜はちゃんと聞こう。あたしは仕事のチャンスを掴むまえに、ヒロシのことをなんとかしないといけないかも
Comments are closed.