自身も声優として活躍しながら声優の育成とマネジメント
13歳で「第22回ホリプロスカウトキャラバン」グランプリを獲得し芸能界デビュー。バラエティ番組などでタレントとして活躍後、声優に。2016年ボイスメイクスクール「美声ラボ」、2019年声優マネジメント事務所「トイプリッズ」を設立し、代表を務めながら自らも声優として活動中。声優界きってのゲーマー女子としても知られる。
13歳にして3万人の中からグランプリ獲得
8歳から役者を志望し、劇団が主宰する養成所に実家のある長崎から毎月1回通っていたという小百合さん。
13歳の時に大きなチャンスが訪れます。なんと第22回ホリプロスカウトキャラバンで約3万人の応募者の中からグランプリを獲得。その後単身で上京しタレント活動を開始しました。
もともと長崎の実家が経営する飲食店にゲーム台があったことから大のゲーム好き。
上京後、中学・高校時代を所属事務所の寮で過ごし、ゲームの中のキャラクターが友だちだったとのこと。「当時のお給料は、全てゲームにつぎ込んでいました」と笑います。
美声、演技、歌唱力を集約させた「声優」への挑戦
高校時代は、バンドを組み、ボーカルを担当。高校卒業後は音楽専門学校にも進学。
学校でミュージシャンを志す仲間たちがギターやベースなどそれぞれの楽器のプロ奏者になるべく道を究めようとする姿を見て、「私はどんな楽器のプロになれるだろう…と考えていました」とのこと。
そして考える中、「そうだ声のプロなら声優だと。大好きな『ゲームキャラクターの声優』になれたらと思うようになったんです」 声優を目指すことを決心した小百合さんは、日本ナレーション演技研究所に特待生として入学。3年間みっちりと声優になるための勉強をしました。
卒業後、芸能事務所に所属した頃には、ゲーム雑誌での連載をはじめ、ゲームキャラクターの声優、ゲーム番組での司会アシスタントとして活躍するほどまでに。
単身世界最大の米国ゲームショー「E3」へ
研究所を卒業した後、芸能活動の中でも「ゲーム」を仕事の主軸にしていこうと決意したきっかけが、毎年アメリカで開催される世界最大のゲームショー「E3(イースリー)」に単身で参加したことでした。
「会場の3日間のパスが約5万円、飛行機代も含めると30万円以上が必要で、20代前半の私には、大きな出費でしたが食費などをギリギリに切り詰めて資金を用意しました」
渡米の目的は、その頃大好きだった「ゲームの最新作を見ること」でしたが、会場に偶然いあわせたスクウェア・エニックス米国法人社長に取材をさせて欲しいとその場で直談判。後日担当者を通したメール取材により、雑誌の連載の記事にしたこともあるそう。
またその頃は、日本で開発されたゲームが世界に進出していくタイミングだったこともあり、会場を訪れていた日本のゲーム会社のプロデューサーやディレクターたちと積極的に名刺交換。「思い切ってアメリカで開催されるE3に行ったことで、世界がグッと広がりました」と振り返ります。
その後も、ゲームナレーション、東京ゲームショウの公式レポーター、アニメ番組の声優やナレーションを担当するなど、ゲーム好きを生かして大活躍。声優としてはもちろん、ゲームイベントやショウの司会などひっぱりだこの状態でしたが、小百合さんの中で変化が起き始めていました。
「表舞台は向いていないかもしれない」
これまでの華々しい活躍をうかがっていると一瞬耳を疑いますが、「『裏方の仕事がしたい』と思うようになったんです」とのこと。
「以前から裏方の仕事には興味はあったのですが、芸能界は、積極的に自分で自分を売り込んでいかないと仕事ももらえないし、生き残れない世界。なのに、それが得意ではないということに気づいたんです。裏方で支える仕事が向いているし、好きだって」
芽生えてきた「美しい声」を指導することへの思い
また一方で、声優として活動する小百合さんから「ボイストレーニングを受けたい」という芸能関係者からのニーズも高まっていました。
きっかけは、インターネット番組「ニコニコ動画」の企画で、タレントさんや芸人さんに発声を指導をしたこと。これを機に小百合さんと同じ事務所に所属するモデルや女優たちに発声をレッスンする機会が増えていきました。
「1時間くらいのレッスンでも、声の出方が変わるんです。目の前で、どんどん自信をつけていく様子を見るのは本当に楽しい。人に教えることの面白さややり甲斐に目覚めました」とのこと。
特に背の高い人は、総じて声帯も長く声が低い傾向にあり、無理をして可愛い声を出そうとするモデルやタレントの方を見てきて、「声や話し方を磨いたらもっと仕事の幅も広がるのに!」という思いを抱くように。
現役の声優として活躍しつつ、声優を育てる楽しさに目覚めた小百合さん。ボイストレーナーになるためには、実績と経験作りが必要だと考え、声優養成学校に連絡を取り、自らを売り込むことで講師としてのキャリアをスタートさせました。
「1日50人程度の生徒を担当してきましたが、生徒1人1人の口の中、舌の筋肉、声帯のバランス、歯並びなどをずっと見てきたので、その子がどれくらい声の幅を広げられるか、どういう声質になるかなどの『声の未来が見える』ようになりました」といいます。
テキストも自ら作成し、小百合さんオリジナルの教授法を確立。次のステップに進む準備を進めていきました。
ボイストレーニング教室「美声ラボ」設立
30歳で、ボイストレーニング教室「美声ラボ」をスタート。
これから声優になりたい方に限らず、すでにプロとして活躍している方、他の事務所に所属している方にも「声量が欲しい」「表現力をつけたい」「緊張しやすいのを克服したい」など、さまざまな要望に応える形で、足りない技術を補い、それぞれの目標を達成できるように指導しているとのこと。
「最初の生徒さんは、テレビに出演している女優さんでした。その方の事務所の社長さんから『発声を鍛えて欲しい』と。 新しいことを始めた私を応援するお気持ちで生徒さんをご紹介くださったのだと思います」
また、レッスンの場所を探していた小百合さんに、「週末で良かったらオフィス使う?」と場所を提供してくれた友人の存在もあったとのこと。周囲の方々の応援が本当にありがたかったと当時を振り返る小百合さん。
というのも……。
厳しい芸能界で身に沁みた周囲からの応援
「芸能界では、周囲はみんなライバル。誰かを頼れる仕事ではありません。何かあっても自分でどうにかするしかないという状況で、孤独な闘いを強いられます」
13歳から厳しい世界で生きてきた小百合さんは、美声ラボの立ち上げの際も融資も受けず、周囲の人にも相談せず、全て自力で行ったそう。
もちろん、助けを求めたら手を差し伸べてくれる人は大勢いたけれど、「これまで会社勤めを一度もしたことのない私が、どこまでできるのか自分を試したかったんです」
「ビジネスメールなんて書いたこともないし、請求書の書き方もわからないから他社さんからきた請求書を取っておいて、こうやって書くのかと参考にしたり。わからないことだらけの状況だったので、余計に人の優しさが身に沁みました」とのこと。
晴れて美声ラボに仕事をいただけるようになった時は、「せめてもの恩返しにと1人目の生徒さんだった女優さんに声優としての仕事を依頼させていただきました」といいます。
美声ラボの立ち上げから2年ほど経過した時に次のステップとして新たな事業展開に向けて、小百合さんはそれまで所属していた芸能事務所から独立することを決心しました。
声優マネジメント事務所「トイプリッズ」設立
プロクラスを受講している生徒さんが育ってきたことから、声優マネジメント事務所「トイプリッズ」を設立。
「声優、役者、タレントを志したものの夢半ばに、それぞれのふるさとに戻って幸せになった人もいれば、ドラマの主演女優になった方も間近で見てきました。
芸能界は、どれだけ努力を重ねても成功する保証はどこにもありません。
それでも私がお預かりする人たちには、夢を叶えてもらいたい。そのためにも、私がこれまで経験してきたは全てお伝えし、困っているときは相談に乗っていきたいと思っています」
現在、トイプリッズに所属の声優は12名、生徒が18名と30名を預かる立場にある小百合さん。後編は、厳しいオーディションを経て「選ばれるためのTIPS」をお話いただきます。
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